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2008.08.29 *Fri*

『小悪魔のキス』(「スレイヴァーズ」二次創作)

その甘美としかいいようのない災厄は、突然冴木に舞い降りた。


仕事のある朝は、軽い風味のコーヒーで始まる。
薄切りのトーストに、バターとジャム。
手早く大根をスライサーにかけると、レモン風味のドレッシングで仕上げる。
目玉焼きは半熟。
塩を少々で完成。
いたってシンプルで何の苦労もない。

柊一が手伝うと言っても、決して許さない。

コーヒーやトーストは、わざわざ柊一の手をわずらわす必要もないし、
スライサーなんて危険すぎて、任せられない。
フライパンで火傷などさせては、
自分が許せなくなるので、目玉焼きもダメ。

「私の趣味は柊一さまですから」と恥ずかしげもなく豪語する冴木は、
恋人にはベタで甘甘で、どうしようもない。

「いくら経験不足と言っても、ちょっとした料理くらい僕にもできるのに」
忙しい朝に、何もさせてくれない不満が募っていた。
そんなとき思い出す風景があった。

体調がよいときは、いそいそと父の世話を焼いていた母。
冴木のかいがいしさは、その母を思い出させる。
とても、幸せそうにしていた母。
そして、父。

冴木も、やっぱり、幸せを感じてくれているのだろうか。

「・・・あ・・・そういえば、僕が冴木のためにできることが、あったっけ」
フランスに駐在していた頃の両親の習慣。

天然の小悪魔は、スーツの上着に袖を通すと、
自分の思いつきに、にっこりとひとり微笑む。

「柊一さま、そろそろ出かけましょう。忘れ物はないですか?」
そう言うと、冴木は柊一を先に玄関に誘導した。
「ああ」
柊一は玄関のノブに手をかける寸前で、身体を反転させる。
「・・・?」
おもわず、そのまま懐に入れて抱きしめてしまいそうな距離に、冴木が立ち止まった。
「・・・えっ・・・?」

天然な小悪魔が降臨する瞬間。

しなやかに伸ばされた指が、冴木の頬を触る。
ほんのり爽やかで甘い香りが近づくと同時に、
暖かい唇が頬をかすめ、そのまま冴木の唇に重なる。
微かに音を立てて軽くキス。
すぐに離れた直後、
再びしっとりと、まるで大切なものを包み込むかのような優しい口づけが降りてくる。

唇が離れても、きれいな瞳に見つめられて、身動きができない。
それなのに、この小悪魔はすっかり自分のペースで言うのだった。
「じゃ、行こうか、冴木」

突然の夢のようなワンシーンに、身体が動かない。
「今のは・・・・」
まるで新婚さんのような、お出かけ前のキス。
「どうした?何か忘れ物か?」

小悪魔は、あっという間に天然に戻ってしまっている。

こんな幸せを、惜しげもなく自分に与えてくれる恋人には、まったくかなわない冴木だった。


*****************************************************************

ニコッ♪こんにちわ、れんです。
いつも、拍手を頂き、ありがとうございます!
励みになります(*^_^*)
今回は、「新婚さんモード~お出かけキス~」
小悪魔な柊一さまと振り回される冴木は、ラブラブで大好きです!
モリモリ・タカピロヴォイスで、読んで頂けたら、
すっごいうれしいです!


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2008.08.17 *Sun*

「イベント・デート~無自覚な小悪魔シリーズ」(『スレイヴァーズ』二次創作)

「柊一さま・・・ちょっと・・・。
 あ、すいません、通して頂けますか。
 待ってください、柊一さま。柊一さま!」

早朝から30度を超す猛暑の中、ごった返す人波を予想外の素早さで進んでいく
華奢な背中を追いかけている。

週末を恋人らしく過ごしたい。

この思いは柊一さまも同じなようで、最近は、美術館や写真展だけでなく、
スポーツ観戦やコンサートまで楽しむようになった。
そして、今日は、仕事の関係でもらった招待パスを持参して、
ある大手出版会社のイベント会場に来ていた。

「柊一さま!」
「ん?どうかしたの、冴木?」
「おひとりで、どんどん進んでしまわれるから、心配しましたよ」
さりげなく息を整えながら声をかける。

「大丈夫だよ。子どもじゃないんだから。
それよりも、向こうに作家の特設ブースがあるみたいだから、行ってみよう」
そういうと、俺の返事をきくまもなく、歩き出そうとする。

「柊一さま、お待ちください。」
「何?」
「暑いですから、水分補給です」
そういって、ミネラルウオーターを差し出すと、
ちょっと不服そうに俺を見上げながらも、素直に飲み始める。
ゴクゴクと飲み下される喉の動きにうっかり視線が釘付けになる。
飲み終わる瞬間に、唇の端からあふれた水が、
なめらかな曲線をたどりながら、
ゆっくりと鎖骨にたどり着く。
昨夜の自分の濃密な行為を思い出して、
朝だというのに、身体が熱くなるのがわかった。

「どうか・・・したか、冴木?」
「・・・いえ。そろそろいきましょうか」
そういいながら、俺は柊一さまのシャツのボタンをひとつはめ直した。
暑いからといって、こんなに開けていては目の毒だ・・・俺自身の。

ひとつひとつの作家ブースをのぞき込み、
時々、その著書を手に取る。
読んだことがあるか、何が面白かったか、など
他愛ないおしゃべりをしながら先に進んだ。

こうした、当たり前のひとときが、こんなにも楽しいのは、
柊一さまと一緒だからだ・・・つくづくそう感じた。

そうこうしているうちに、ひどくごった返しているスペースが見えてきた。
「あれは、なんだろう」
「そうですね、何かステージがあるようですね」
「行ってみよう」

柊一さまのこういう好奇心の強さや行動力には、新鮮な思いがした。
普段は、思慮深くて落ち着いた雰囲気が前面に現れているが、
本来は、こんな活発な一面も持ち合わせておられるのだ。

置いて行かれないように、慌てて歩き出すと、
柊一さまは俺の手をとり、そのまま腕まで絡ませた。
「柊一さま・・・」
「お前が迷子になったら・・・困るだろう?」
そういうと、上目遣いでにっこりと微笑む。

まったく、この人にはかなわない。


スペースに近づくと、それが若者に人気のあるテレビアニメのイベントコーナーで
あることがわかった。
どうやら、この出版社は、アニメの原作を手がけており、
最大のスポンサーとなっているらしい。

なんだ、アニメか・・・。
当然柊一さまも、通り過ぎるだろうと思っていた。
しかし・・・。

「・・・これ、桔梗が気に入っていたアニメだ」
「えっ・・・・」
桔梗さま・・・こんなところで、この人の名前がでるなんて。
水を差されたようで、ちょっとイヤだ。

「へぇ・・・今日は、声を出している声優もゲスト出演するんだって」
「はぁ・・・」
声優が来るからって、なんなんだ、一体。
「そう言えば、ここに出ている声優さんに、声が似ているんだって」
「似ている・・・って?」
「僕の声が、似ているそうだよ。」
「誰がそんなことをあなたにいったのですか?」
「うちの課のアシスタントの女性たちだよ」
「・・・・・・・・・・・」
「彼女たちが好きな声優さんと声が似ているって。
良い声だって、『カッコ可愛い』って褒められたよ。
カッコ可愛いなんて、言葉、はじめて聞いた」
軽く笑う声も、俺にはぼんやりしか聞こえてこなかった。

柊一さまの声を褒めた?
イイ声だって?
カッコ可愛い?


イイ声を聴いていいのも、褒めていいのも、俺だけなはずなのに。
言いようのない熱い感情に、たちまちのうちに支配される。

「柊一さま、帰りましょう」
「え?」
柊一さまの腕をとり、肩を抱いて人の間をかき分ける。
目指すは、イベントの退場口だ。

「冴木、ちょっと待てよ。何で帰るんだ。桔梗に何か土産を買って帰りたいのに。」
「帰ります」
「まだ見ていないスペースもあるのに。冴木!」
「いいから、帰りますよ」

屋内駐車場には人影もなく、自分たちの足音ばかりが大きく響いていた。

「冴木。なにを怒っているんだ?」
「・・・怒ってません」
「嘘だ。怒っている」
「怒ってなどいませんから」
車内は、気まずい雰囲気のまま、広尾のマンションにたどり着いてしまった。

こんなはずでは、なかったのに。

シャワーを浴びてリビングの戻ると、バスローブ姿の柊一がソファにもたれていた。
「冴木・・・」
促されて、隣に座る。
「なんか、喧嘩しているみたいで、イヤなんだ」
「柊一さま」
「どうして、急に帰ろうとしたのか、ちゃんと説明してくれないか」

え・・・。
アシスタントの女性に嫉妬したと白状しろと言うのだろうか・・・。
自分の知らないアニメのことを、桔梗様と話していたことが面白くなかった、
と言わなければならないのだろうか。
どうしようかと、視線が泳ぐ。

「冴木・・・」
柊一は、冴木の膝に乗り上げる勢いで近づくと、ローブのあわせがはだけるのもかまわずに、
身を寄せてきた。
「柊一さま・・・あ・・・」

もうダメだ。
心の狭い自分をさらしたくはないが、こんな状態で迫られては、とても太刀打ち出来ない。

「すいませんでした。あなたが・・・声を褒められた何ていうから。」
「だから?」
「あなたの声も、身体も。・・・心も、私だけのものなのに。
他の誰にも、聞かせたくないと思ってしまって」

恥ずかしい告白を、素直に打ち明ける。
まるで、子どもみたいだと思いながらも、こんなにも素直になれるのも、
この人の前だからだ、と改めて思う。

「ヤキモチをやいたのか?」
うっ・・・あからさまな言葉で確かめられる。
「・・・そうです」
「そうか。・・・わかった。もう、いいよ」

許しの言葉にほっとするまもなく、熱い身体を感じて驚く。
「柊一さま?」
白い太ももをあらわに、膝立ちの姿勢で俺の膝に乗った柊一さまは、
チュッ、と音を立てて、素早く口づけると小さく囁いた。

「可愛いな・・・鷹成」
「柊一さま・・・」
「どうしたの、さっきから、僕の名前ばかり呼んで。
他に、言いたいことはないのか?」

ほとんど唇が触れるほどの距離でねだられる。

「愛しています・・・。
おろかな嫉妬に狂いそうになるほど、あなたを愛することを、許してください」

柊一さまの指が、優しく髪を愛撫するのを感じながら、じっと見つめあう。

「お前だけだ。許してやる。」

あふれそうな思いのまま、何度も口づけをかわす。
「私のためだけに、声を聴かせてください」
「ああ・・・聴かせてやるから・・・早く・・・冴木・・・」

柊一さまの中心に指を絡めると、甘い吐息を吐きながら白い胸が仰け反った。
我慢出来ずに、赤い尖りに唇を落とす。
「あっ・・・さえ・・・・ん・・・」
舐めしゃぶり、音を立てて吸い付き、噛みつく。

この甘い声は、俺だけのものだから。
あなたが、それを俺だけに許してくれるから。



・・・やはり、愚かな嫉妬というものも、愛すべきものなのかもしれない。

とはいうものの、声優好きのアシスタントの人事異動は、冴木の胸の中では決定事項だった。

LOVEThe End

2008.08.10 *Sun*

「冴木の趣味」(『スレイヴァーズ・プレミアムブック企画』) by れん

週末のアフターファイブ。
冴木と若宮は、久しぶりに居酒屋で冷酒を楽しんでいた。


「最近クルーザーを買ったんだ」
「クルーザー?」
「ああ。」
そうか・・・恋人との週末のために、クルーザーという方法もあるのか。

このところ、「恋人との週末の過ごし方」の研究に力が入っている冴木は、
さっそく、最愛の恋人と、自分とのツーショットにクルーザーを重ねてみる。

・・・柊一さまは、気に入るだろうか・・・。

「・・・ところがだ・・・ん?おい冴木、聞いているのか?」
「あ・・・ああ、聞いている。クルーザーのどこが問題なんだ?」

「大問題さ。実は、早瀬にはまだ話していない」
「なんでだ?」

あっさりした白身の刺身を口に放り込むと、ため息混じりに話し出す。
「どうせ文句言われるだろうし。へたすりゃ、売っぱらわれてしまう」
「まさか」
「いやいや。
『なんなんですこれは。オモチャにしては、無駄に高価ですね。』
って言われそうで、気が重い」

優秀な社内弁護士も、恋人の前では小心な一面を持ってしまうらしい。
「恋人とふたりで海を楽しむなんて、随分ロマンティックな趣味だな。」
らしくない、といった風に、ちょっと笑うと、冴木は冷酒の盃をぐっとあける。
「そういうお前はどうなんだ、冴木?
週末はどうやって過ごしているんだ?
そういえば趣味はなんだった?」

趣味・・・・・。
なんだろう。

週末の過ごし方で一番好きなのは、柊一さまとだらだらと過ごすこと。
柊一さまとゆっくりお風呂に入ること。

その至福の時は、金曜の夜から始まる。
休前日の夜は、先に柊一さまを風呂に誘導して、
すぐその後で自分も入る。
もちろん、入るだけで終わるはずもなく、
浴槽にふたりでつかって少し話をしながら体中を触る。
さらに、隅々まで洗って差し上げて、
シャンプーもトリートメントも手を抜かない。

浴槽の縁に柊一を座らせて、
柊一自身を、思う存分口で愛することも絶対に欠かせない楽しみのひとつだ。
浴室に響く、甘い声は、本当ならいつまでも聞いていたいが、
何度か柊一をのぼせさせてしまい、
こっぴどく叱られたため、
一応、精一杯自重して風呂の中では2回までと決めている。
(『そんな恥ずかしいことを、勝手に決めていたのか、冴木!』
 『相談したら、3回に増やして頂けましたか?』
 『当然、却下だ、バカ!』)

その後は、ベッドに連れて行って、一緒にミネラルウォーターを飲んで、
そして・・・明け方近くまで愛し合うのだ。

休日は、たいてい冴木の方が先に目が覚めるので、
しばらくはおとなしくしているが、やはり、我慢出来なくなると、
ごそごそといやらしいちょっかいをかける。
朝の柊一を堪能した後は、
美味しい紅茶を入れてやって、
好物のメニューを作って、
・・・・・・・すべてが柊一さま中心に過ごすことが一番の幸せだな。

・・・ということは、俺の趣味は・・・。


「どうした冴木。もう酔ったのか?」
うっかり、柊一に思いをはせていて、若宮のことを忘れていたようだ。

「いや。しかし、そろそろ帰るぞ」


タクシー乗り場で若宮と別れて、広尾のマンションにたどり着いたのは、
22時を少し過ぎた頃だった。

「ただいま戻りました」
「おかえり、冴木。早かったな、若宮先生と飲んできたんだろう?」
「はい。」
上着を脱いで、柊一から冷えた麦茶を受け取る。

「若宮は、早瀬に内緒でクルーザーを買ったそうです。
今度、柊一さまもご一緒に、海に出ないかと誘われました。」
「へぇ、クルーザーか。楽しそうだな。」
「楽しそうですか?」
「えっ・・・楽しそうじゃないのか?」
「いえ、別に」

そうか・・・クルーザーは、柊一さまもお好きなのか。

なんだか若宮に先を越されたみたいで、面白くない。

「あ、そうだ冴木。
お前、経済誌の取材を断ったって?」
「取材?ああ、冬文出版のですか?はい、お断りしました」
「どうして?冬文出版の経済誌は、内容もしっかりしているし、
特に問題はないだろう?」

もちろん、それは知っている。
しかし、今回のインタビューには冴木のプロフィールというおまけの注文がついていたのだ。
「私は、趣味だの、モットーだの、マイブームだの、好きな食べ物だの、仕事を頑張れる秘訣だの、
そういうことをしゃべらされるのは、お断りです」
「なんだ、そんな理由で断ったのか?」
「いけませんか?」
「いけなくは・・・ないが、気軽に答えればいいんじゃないのか?」
「気軽に答えていいのですか?」
「・・・別に・・・かまわないだろう?」
柊一はにっこり笑うと、ちょっと首をかしげて、その美しい瞳で冴木を見つめた。

「では・・・私の趣味は、柊一さまです。」
「えっ・・・・・?」
「モットーは、柊一さま絶対至上主義。
 マイブームは、柊一さまとの充実した恋人らしい週末の過ごし方。
 好きな食べ物は、柊一さまのアソコです」
「あ・・・ああああ~~~~、やめろ冴木。やめてくれ!」
「柊一さまを舐め回して、むしゃぶりついて、感じさせて、歓ばせて、
 一緒に何度も絶頂を味わって、愛してますと言うことが、仕事で頑張れる秘訣です。
 このとおり、インタビューで答えてやればいいのですね」

柊一は首まで真っ赤にして、上目遣いににらみつける。
「冴木・・・お前。」
「さぁ、柊一さま、今夜は金曜ですから、シャワーですまさずに、
一緒にお風呂に入りますよ。」
「いやだ、僕はひとりで入るから、いい」
「ダメです。」

離れそうになる柊一の身体を、素早く抱き込むと、そっと耳元に囁く。
「私の趣味はあなたなしでは、成り立ちません。どうぞ付き合ってください」
そうして、優しく口づけるのだった。

The End


2008.08.05 *Tue*

「恋焦がれる夏」(『スレイヴァーズ・プレミアブック企画』)by れん

静かな夏の午後。
顧問弁護士である若宮の電話が、軽やかになった。

「はい、若宮です」
「ああ!若宮先生、いてくださって、よかった!
私は、広報企画部の石山と申します。
いつもお世話になっております。
実は早急にご助言を頂きたい内容がありまして。
おうかがいしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、では、2時半で。かまわないかな?」
「はい!ありがとうございます!」
「・・・何か、まずいことでも?」
「・・・場合によっては。とりあえず、ご説明させてください!」

時間より5分早く、石山は来室した。
どうぞ、という言葉とほぼ同時に、バタバタと転がり込むように来た人影は、
怒濤のようにしゃべり始めた。

「先生!お届けの期限をどのくらい過ぎてしまったら、
遅延のお詫びメールを出すべきでしょうか!」
「えっ?」
入室するなり、自己紹介もそこそこに、石山は泣きそうな声で訴え始めたのだ。

「費用はすでに頂いている、お客様全員サービス企画なんです!
広報企画部が総力を挙げて作り上げた、プレミアブックなんです!
それが、月末にはお届けだったはずが、まだ発送できない状態で・・・。
我々は、どうしたらいいでしょう(涙)」

すがりつかん勢いで迫られた若宮は、とりあえず麦茶でも飲んで、
落ち着いてほしいと、グラスを差し出した。


「つまり、君の話を要約すると、こうなるのかな。
7月末にお届けを約束していたプレミアブックの発送が遅れている。
お客様には、費用負担もして頂いているのに、
このままでは、我が社の信用問題にもなりかねない。
どの程度の遅延から、謝罪メールが必要となるか・・・ということかな?」
「はい!」
飲み込みの早い顧問弁護士に、ちょっとだけ明るい未来が見えたのか、
石山は、元気に返事をした。

「・・・ちょっと教えてくれないか。
まず、発送の目処はいつ頃なんだ?
それから、そもそも発送が遅れている原因は何だ?」

「それは・・・」
「それを言ってくれないと、俺としても助言のしようがないな」
「目処は・・・正直言ってありません。」
「はっ?」
「いつゴーサインが出るのか、まったくわからないんです」
「一体どういうことだ?本は完成していないのか?」
「いえ、本はすべて完成しております。
あとは、発送準備に入ればいいだけです。・・・ですが」
「何か、問題が?」
「はい・・・あの・・・実は・・・」
言いよどむ相手に、いらだちが募る。
「君は助言を欲しいのだろう?それなら、はっきり答えるべきだ。」
きっぱりと、しかし静かな口調で問いかける。
「はい!実は、冴木社長のお許しが頂けないのです」
「なに?」


プレミアブックは、柊一と冴木を長年応援してきたお嬢様とマダムのための
特別企画で、柊一のこんな表情とか、冴木とのあんなエピソードなど、
レアでお得感満載の内容に仕上がった。
絶対に喜んで頂ける、と納得の仕上がりだったのだ。
ところが、原案は了承されていたはずなのに、
いざ完成してみると、冴木がストップをかけてきたのだった。

曰く、「この話は、柊一さまと私だけの大切なエピソードなのだから、
このような場で公表してもらっては困る。
削除しろ。
それから、この部分、柊一さまのお美しさを表現するには、
まだまだ言葉が不十分とは思わないか?
書き直しだな。
あと、本の装丁だが、もう少し上質の紙を使うように。」

すべての話を聞き終えて、ようやく広報企画部が陥っている
大変な状況が理解出来た。
冴木の注文は、はっきり言って無理だ。
そんな本を作りたければ、自費で作れ、と言ってやりたかった。
作れるなら、俺だって、『秘密の早瀬本』を作ってみたい。
世界にひとつしかない、袋とじ仕様だ!
おっと、思考が脱線してしまった(これは、家でじっくり考えてみよう♪)。

でも、絶対に冴木にそんなことをそそのかすつもりはなかった。
なぜなら、もし、冴木が本気になって『柊一さま萌え本』を作ると言い出したら、
もう、誰も止められないとわかっていたからだ。


しかし、社長である冴木を突破しなければ、プレミアブックの発送はできない。
なるほど・・・これはやっかいだな。

「わかった。
とりあえず、明日までに発送の目処が立たない場合は、すぐに謝罪メールを出すことを
検討したほうがいいだろう。。
目処が立って、数日以内に発送可能なら、メールはなしにして、
そのかわり遅延をわびるカードを同封するというのはどうだろう。
俺は、冴木社長に、直接当たってみることにするよ。
それで、いいかな?」
「はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」

やれやれ・・・・。
まったく、恋する男というものは、傍迷惑なモノだ・・・。

若宮は、その脚で冴木の部屋を訪れた。
「さえ・・・何をしているんだ?」
いつもなら、整理整頓されている冴木の社長室は、
色とりどり、材質も様々な紙が広げられていた。
「若宮か。すまないが、今は手を離せないのだが、急用か?」
ちらっと視線を向けて尋ねるが、心ここにあらずといった具合だった。
「いや・・・実は、プレミアブックについて小耳にはさんだもので・・・」
「なんだ、お前もか。俺も、そのことでちょっと忙しいんだ。」
「何をしているんだ?」
「広報企画部の手には余るだろうから、ちょっと手伝うことにしたんだ。
表紙の色だが、やはり柊一さまといえば、純白がいいかなと思って。
あ・・・だが、あの方は、心が強くて熱い方だから、情熱的な赤もお似合いだ。
しかし、イメージとしては、ラベンダーの上品な紫も捨てがたいな。
金箔の型押しも是非入れたいところだし。
ああ・・・迷うな・・・。」

ダメだ、これは。
こんなに盛り上がっている冴木を正面突破するなんて、とてもできそうにない。
部屋中に紙の色見本を広げた冴木を残して、早々に立ち去る若宮であった。

どうしようか・・・思わず深いため息を着いてしまう若宮だった。

ところが・・・。

このままでは、発送の目処が立たない・・・と思われたプレミアブック。
実は翌日の午後には、あっさり発送されてしまった。
早瀬の助言によって、事態は急遽解決に向かったのだ。

いつものごとく、若宮は、早瀬に事の次第を語ったのだった。
「なんだ、そんなことで広報企画部は手間取っていたんですか。
その内容なら、通常の決裁ルートは不適切でしょう。
冴木社長を通す必要はありません。
つまり、特別決裁Exを使うべきなのです」
「・・・特別決裁・・・Ex?そんなものが倉橋物産には設定されているのか?」
「今まで使ったことはありませんが、使うべきでしょう。
特別決裁Ex。つまりExtralegalルートです」
「・・・超法規的ルート?」

驚きを隠せない若宮を相手に、早瀬はまるで中学生に連立方程式を説明するかのように
淡々と謎解きをしていった。

「ええ。
今回のプレミアブックは、神とも言える上層部がゴーサインを出しているのでしょう?
それなら、たとえ冴木社長でも、従うべきです。
っていうか、さくっとスルーすればいいんです、社長なんて。
つまり、神がいいというから、発送もオッケーと解釈して、
ちゃっちゃと発送してしまえばいいのです。」

「おい、ちょっと待ってくれ。
そんなことをして、あとで冴木に何と言えばいいんだ?」
あんまりな展開に驚いて、思わず恋人の細い腕をつかんだ。
しかし早瀬は、しなやかな動作で自ら、その身を寄せると、
若宮の頬を指で触れながら、声をひそめてささやいた。

「もしも、冴木社長が文句を言ってきたら、こういって差し上げればいい。
『次は、冴木社長のご意見を取り入れて、是非もっと素敵な本を
作りましょう』とね。
お嬢様もマダムも、こういうプレミアブックをもっと読みたいと
期待しておられるのです。
また、次を作ればいいじゃないですか」
そう言い切ると、うっすらと怜悧な笑みを浮かべたのだった。

なんという柔軟な思考、回転の速さだろう。
絶対に敵には回したくないと、思いながら、
何を考えている、俺は恋人じゃないか、と自分を叱咤激励する若宮だった。


こうしてプレミアブックは、無事届けられるはこびとなった。

広報企画部、プレミアブック第2弾も期待されているぞ!
頑張れ(*^_^*)

インフォメーション

彩香とれんの萌え満載のBL二次創作小説ブログです♪
れんによる『えれなさんのBL小説スレイヴァー○』シリーズの二次創作SS☆
現在、彩香による『ShokoさんのBLコミック○○な朝』18禁二次創作SS更新中♪いずれの作品も原作・版元には一切関係のない個人の創作になります。了承の上お楽しみくださいませ。



プロフィール

lisa

Author:lisa

レンタルサーバー


Author:lisa
昼は社会人、夜はハードなBL星人です。
無理矢理が大好物なドS属性。
濃ゆくて切ないBL小説が書きたいの。
現在、Hidaka Shoko先生のBLコミック『憂○○朝』に萌え暴走&妄想&二次創作中です。
桂木が好き過ぎて困る。
誰か止めて…笑

lisaの萌えブログ「BL萌え的生活」へはリンクから飛べます^^


Author: れん
Elena先生のBL小説「ス○○○ーズシリーズ」の二次創作担当です。
甘い柊一さまと冴木をお楽しみくださいませ。
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