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2008.08.05 *Tue*

「恋焦がれる夏」(『スレイヴァーズ・プレミアブック企画』)by れん

静かな夏の午後。
顧問弁護士である若宮の電話が、軽やかになった。

「はい、若宮です」
「ああ!若宮先生、いてくださって、よかった!
私は、広報企画部の石山と申します。
いつもお世話になっております。
実は早急にご助言を頂きたい内容がありまして。
おうかがいしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、では、2時半で。かまわないかな?」
「はい!ありがとうございます!」
「・・・何か、まずいことでも?」
「・・・場合によっては。とりあえず、ご説明させてください!」

時間より5分早く、石山は来室した。
どうぞ、という言葉とほぼ同時に、バタバタと転がり込むように来た人影は、
怒濤のようにしゃべり始めた。

「先生!お届けの期限をどのくらい過ぎてしまったら、
遅延のお詫びメールを出すべきでしょうか!」
「えっ?」
入室するなり、自己紹介もそこそこに、石山は泣きそうな声で訴え始めたのだ。

「費用はすでに頂いている、お客様全員サービス企画なんです!
広報企画部が総力を挙げて作り上げた、プレミアブックなんです!
それが、月末にはお届けだったはずが、まだ発送できない状態で・・・。
我々は、どうしたらいいでしょう(涙)」

すがりつかん勢いで迫られた若宮は、とりあえず麦茶でも飲んで、
落ち着いてほしいと、グラスを差し出した。


「つまり、君の話を要約すると、こうなるのかな。
7月末にお届けを約束していたプレミアブックの発送が遅れている。
お客様には、費用負担もして頂いているのに、
このままでは、我が社の信用問題にもなりかねない。
どの程度の遅延から、謝罪メールが必要となるか・・・ということかな?」
「はい!」
飲み込みの早い顧問弁護士に、ちょっとだけ明るい未来が見えたのか、
石山は、元気に返事をした。

「・・・ちょっと教えてくれないか。
まず、発送の目処はいつ頃なんだ?
それから、そもそも発送が遅れている原因は何だ?」

「それは・・・」
「それを言ってくれないと、俺としても助言のしようがないな」
「目処は・・・正直言ってありません。」
「はっ?」
「いつゴーサインが出るのか、まったくわからないんです」
「一体どういうことだ?本は完成していないのか?」
「いえ、本はすべて完成しております。
あとは、発送準備に入ればいいだけです。・・・ですが」
「何か、問題が?」
「はい・・・あの・・・実は・・・」
言いよどむ相手に、いらだちが募る。
「君は助言を欲しいのだろう?それなら、はっきり答えるべきだ。」
きっぱりと、しかし静かな口調で問いかける。
「はい!実は、冴木社長のお許しが頂けないのです」
「なに?」


プレミアブックは、柊一と冴木を長年応援してきたお嬢様とマダムのための
特別企画で、柊一のこんな表情とか、冴木とのあんなエピソードなど、
レアでお得感満載の内容に仕上がった。
絶対に喜んで頂ける、と納得の仕上がりだったのだ。
ところが、原案は了承されていたはずなのに、
いざ完成してみると、冴木がストップをかけてきたのだった。

曰く、「この話は、柊一さまと私だけの大切なエピソードなのだから、
このような場で公表してもらっては困る。
削除しろ。
それから、この部分、柊一さまのお美しさを表現するには、
まだまだ言葉が不十分とは思わないか?
書き直しだな。
あと、本の装丁だが、もう少し上質の紙を使うように。」

すべての話を聞き終えて、ようやく広報企画部が陥っている
大変な状況が理解出来た。
冴木の注文は、はっきり言って無理だ。
そんな本を作りたければ、自費で作れ、と言ってやりたかった。
作れるなら、俺だって、『秘密の早瀬本』を作ってみたい。
世界にひとつしかない、袋とじ仕様だ!
おっと、思考が脱線してしまった(これは、家でじっくり考えてみよう♪)。

でも、絶対に冴木にそんなことをそそのかすつもりはなかった。
なぜなら、もし、冴木が本気になって『柊一さま萌え本』を作ると言い出したら、
もう、誰も止められないとわかっていたからだ。


しかし、社長である冴木を突破しなければ、プレミアブックの発送はできない。
なるほど・・・これはやっかいだな。

「わかった。
とりあえず、明日までに発送の目処が立たない場合は、すぐに謝罪メールを出すことを
検討したほうがいいだろう。。
目処が立って、数日以内に発送可能なら、メールはなしにして、
そのかわり遅延をわびるカードを同封するというのはどうだろう。
俺は、冴木社長に、直接当たってみることにするよ。
それで、いいかな?」
「はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」

やれやれ・・・・。
まったく、恋する男というものは、傍迷惑なモノだ・・・。

若宮は、その脚で冴木の部屋を訪れた。
「さえ・・・何をしているんだ?」
いつもなら、整理整頓されている冴木の社長室は、
色とりどり、材質も様々な紙が広げられていた。
「若宮か。すまないが、今は手を離せないのだが、急用か?」
ちらっと視線を向けて尋ねるが、心ここにあらずといった具合だった。
「いや・・・実は、プレミアブックについて小耳にはさんだもので・・・」
「なんだ、お前もか。俺も、そのことでちょっと忙しいんだ。」
「何をしているんだ?」
「広報企画部の手には余るだろうから、ちょっと手伝うことにしたんだ。
表紙の色だが、やはり柊一さまといえば、純白がいいかなと思って。
あ・・・だが、あの方は、心が強くて熱い方だから、情熱的な赤もお似合いだ。
しかし、イメージとしては、ラベンダーの上品な紫も捨てがたいな。
金箔の型押しも是非入れたいところだし。
ああ・・・迷うな・・・。」

ダメだ、これは。
こんなに盛り上がっている冴木を正面突破するなんて、とてもできそうにない。
部屋中に紙の色見本を広げた冴木を残して、早々に立ち去る若宮であった。

どうしようか・・・思わず深いため息を着いてしまう若宮だった。

ところが・・・。

このままでは、発送の目処が立たない・・・と思われたプレミアブック。
実は翌日の午後には、あっさり発送されてしまった。
早瀬の助言によって、事態は急遽解決に向かったのだ。

いつものごとく、若宮は、早瀬に事の次第を語ったのだった。
「なんだ、そんなことで広報企画部は手間取っていたんですか。
その内容なら、通常の決裁ルートは不適切でしょう。
冴木社長を通す必要はありません。
つまり、特別決裁Exを使うべきなのです」
「・・・特別決裁・・・Ex?そんなものが倉橋物産には設定されているのか?」
「今まで使ったことはありませんが、使うべきでしょう。
特別決裁Ex。つまりExtralegalルートです」
「・・・超法規的ルート?」

驚きを隠せない若宮を相手に、早瀬はまるで中学生に連立方程式を説明するかのように
淡々と謎解きをしていった。

「ええ。
今回のプレミアブックは、神とも言える上層部がゴーサインを出しているのでしょう?
それなら、たとえ冴木社長でも、従うべきです。
っていうか、さくっとスルーすればいいんです、社長なんて。
つまり、神がいいというから、発送もオッケーと解釈して、
ちゃっちゃと発送してしまえばいいのです。」

「おい、ちょっと待ってくれ。
そんなことをして、あとで冴木に何と言えばいいんだ?」
あんまりな展開に驚いて、思わず恋人の細い腕をつかんだ。
しかし早瀬は、しなやかな動作で自ら、その身を寄せると、
若宮の頬を指で触れながら、声をひそめてささやいた。

「もしも、冴木社長が文句を言ってきたら、こういって差し上げればいい。
『次は、冴木社長のご意見を取り入れて、是非もっと素敵な本を
作りましょう』とね。
お嬢様もマダムも、こういうプレミアブックをもっと読みたいと
期待しておられるのです。
また、次を作ればいいじゃないですか」
そう言い切ると、うっすらと怜悧な笑みを浮かべたのだった。

なんという柔軟な思考、回転の速さだろう。
絶対に敵には回したくないと、思いながら、
何を考えている、俺は恋人じゃないか、と自分を叱咤激励する若宮だった。


こうしてプレミアブックは、無事届けられるはこびとなった。

広報企画部、プレミアブック第2弾も期待されているぞ!
頑張れ(*^_^*)
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