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2008.09.14 *Sun*

『switch』(「スレイヴァーズ」シリーズ二次創作)

「何事も経験だって、僕に言ったのは、お前だろう」
「・・・えっと・・・はい、それは言いましたが・・・」
「それなのに、やってみないうちに、無理だなんて。
お前は、僕を侮辱するのか」
「いえ、別に侮辱なんてするつもりは」
「つもりがなくても、僕がそう感じれば侮辱は成立するんだ」

・・・柊一さま、それはセクハラの定義ですか・・・

日付の変わった静かな夜。
広尾のマンションのリビングでは、穏やかで厳しい柊一の声と
なだめようとする冴木の声が響く。

「柊一さま、そろそろ夜も遅いです。さぁ、水をもう一杯いかがです?
そして、もう今夜は寝ましょう」
「いや、まだ寝ない。だいたい、どうして僕では無理だというんだ。
納得のいくよう説明しろ、冴木」

・・・ああ・・・どうしよう・・・言うんじゃなかった・・・。

覆水盆に返らず・・・後悔先に立たず・・・か。
アルコールでぼやけた頭に、繰り返しても役に立たないことわざが思いつく。
それでも、柊一の声は続いた。


「僕の何が不足なんだ。
確かにお前は何でも僕よりうまくできる。
料理だって、アイロンかけだって、パソコンやDVDの接続もそうだ。
だからって、なんで僕ではダメなんだ。」
「柊一さま、別にそういうことは慣れですから、特別器用でなくてもできるわけで」

・・・もう少し・・・あと10分なんとか持ちこたえれば・・・柊一さまは・・・

「なんだ、お前は僕が、特別不器用だから無理だと言うのか?」
「あ・・・すいません、そんなつもりじゃ」
「それなら、無理じゃないと認めるか?」

・・・もうちょっと・・・そろそろ・・・かな・・・

「えっと・・・はい・・・無理じゃないかも・・・しれませんが・・・でも」
「曖昧な答えだな。経営者らしくないぞ、冴木」

・・・うっ・・・こんなところで、経営者を持ち出さなくても・・・・。
柊一に気づかれないように腕時計を確認する。
帰宅してから約30分・・・そろそろ頃合いだろう。
とにかく、穏やかに納めなければ。
すっと息を吸うと、誠意を込めて話し始める。

「はい、柊一さまにもできます。たぶん、無理じゃないです。
でも、私が耐えられません。私の方が無理なんです。
だから、お願いです。
それは、どうぞ、私だけの役割にさせてください、柊一さま」
座っている柊一の傍らにひざまづいて、素直に頭を下げて心から頼む。

「無理じゃないと、お前が認めるなら、それでいい。
当たり前だ。
これからも、お前だけだ。
・・・お前だけ・・・だから・・・」
少し機嫌を直して、そう言うと、そのままソファに沈み込む。

午前1時25分。

「はぁ。やっと眠ってくださった。
だいたい、睡眠不足で酒を飲むと、妙に絡んでこられるから困る。」

冴木は脱力した柊一を両手で抱きかかえると、深いため息をついた。


柊一は、結構酒癖が悪い。
醜態をさらすという意味ではなく、手がかかるのだ。
一見酔ってるように見えないくらい冷静で、行儀もよい。
ところが、妙に意地っ張りでわがままになり、
少し時間がたつと、スイッチがオフになるかのように、急に寝てしまう。

「ま、手がかかるだけじゃなくて、お可愛らしいところもあるのだが・・・」
そうつぶやくと、もう一度深いため息をついて、数時間前の自分の失敗を思い出した。



その日は、めずらしく若宮と早瀬のマンションで酒を飲んだ。
デリケートな勘案事項を議題とした会議が、上首尾に終わったという開放感もあって、
会議の準備で睡眠不足の柊一を誘ってしまったのが、そもそもまずかった。

さらに、若宮とセクシャルな話題で盛り上がってしまったのも、かなりまずかった。
いわく、「抱く方は、相手にダメージを与えないように、根気強く身体をほぐして、
受け入れる準備をしなければならない。
自分の快楽を追いかけたい欲望を抑えながら、
ひたすら丹念に丁寧に施す行為は、
かなり器用でなければ、無理だ」
などという結論で、若宮と自画自賛して乾杯したことから、冴木の災難が始まった。

帰宅途中のタクシーでの柊一の無言の不機嫌さは、帰宅後に正体を現した。

「つまり、僕が不器用だから、抱く行為は無理だと言うのか」

いきなりな詰問に、度肝を抜かれる。

何を言っておられるんだ、柊一さまは。
抱くって・・・えっ・・・俺を?

若宮との下世話な話にのめりこんで、つい柊一の飲酒量まで気づかずにいた。
顔色は全く変わっていないが、これは、相当飲んでいる様子だ。

そこから、延々と冴木の苦行が続いた。
酔って正気を吹き飛ばした柊一は、別に冴木を抱きたいと思っているわけではない(たぶん:笑)。
ただ、もともと冴木より不器用という劣等感を刺激された上に、
「不器用だから抱く行為は無理」と決めつけられたと思いこみ、
勝手に憤慨している状態だった。


どう言い訳しても、取り繕っても、納得してもらえず、
いつものように、スイッチがオフになって眠ってしまうのを、
ひたすら待つばかり。
その、忍耐と努力がようやく実ったのだ。


「さて、今のうちにシャワーを浴びてこよう」
柊一をベッドに寝かせて、額にキスをすると、いそいそと浴室へと向かった。

実は、酔った柊一の不思議な行動パターンはここで終わりではない。
というよりも、冴木にとっては、ここからがお待ちかねなのだ。
ちゃっちゃと風呂を済ませて、バスローブを羽織り、
眠る柊一に寄り添って、その寝顔をを眺めることしばし・・・。
かたわらの柊一がぱっちりと目を開けて、上体を起こした。

・・・目が覚めましたね、柊一さま。

「冴木」
「はい、ここにおります。どうされましたか、柊一さま」
「冴木・・・キス・・・して。
抱いて・・・。
もう、こんなの脱げよ。
僕も脱ぐから」

「わかりました、キスですね。
大丈夫です、私は自分で脱ぎますから、柊一さまは脱いじゃダメですよ。
私が脱がせて差し上げます」


再びスイッチが入った柊一は、いきなり大胆モード全開になる。

普段でも、はじめは恥ずかしがっているが、冴木がお願いすれば、
大概は許してくれて、びっくりするほど奔放に快楽に溺れてくれる。
それが、可愛らしくて色っぽくてうれしい。

しかし、深酒したときは、恥じらいがすっきり省略されてしまうらしく、
まさに、いきなりなのだ。
天然で素直な小悪魔は、冴木の身も心も熱くする。
そして、熱く湿った狭い場所で、気が狂いそうなほど気持ちよく締め付けてくる。
その声で、身体で、たががはずれたような激しい行為に誘うのだった。


何度果てたかわからないが、ようやく本物の眠りについた柊一の頬に、
優しいキスを繰り返す。

「柊一さま・・・愛してます」

こんな表情を見られるのは自分だけだ。
そう思うと、苦しいほどの愛おしさが増して、両手で強く抱きしめるのだった。





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ニコニコ。 横向きれんです。
拍手ありがとうございます!
ホント、すっごいうれしくて、パソ前で踊ってます(笑)

当初の予定では、酔っぱらい冴木を書きたかったのですが、
なぜか、柊一さまのご登場となりました。
深酒な柊一さまの行動は、
あくまでも私の偏った好みによるマイ設定なので、
「これは柊一さまじゃない~~」って思われた方には、ごめんなさいです。

でも、前半のおろおろしたりなだめたりする冴木を、もりもりのお声で
聴いてみたくて、結構楽しく書いてしまいました。
できれば、今後も素敵柊一さま情報を冴木から仕入れたいと思います。
冴木視点の「柊一さまラブ日記」とか?(←おバカ過ぎてすいません)

読んで頂いて、ありがとうございました!







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